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診断の内容をみてみると以下のようになる(1986−89年)

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このようにこの国のプログラムでは、原則どおり塗抹菌陽性の患者の診断・治療に優先性がおかれていることが知られる。

 

5) 菌検査体制
この国の患者発見の質的な面で中心になるのは、郡病院(結核課)での結核菌塗抹検査であろう。従ってこれの精度管理は重要である。
郡病院の検査施設は顕微鏡、薬品、スライド、容器、登録簿などをそなえつけてある。ここで検出された陽性スライドの全部および陰性スライドの10%は保存しておいて、定期的に県検査室に送り、読み比べによる点検を受ける。しかし実際にはこれはあまりきちんと行われていない。とくに南部では殆ど行われていないし、北部でも比較判定に回す標本の抽出はかなり不規則であるようにみた。読み合わせが行われている分については成績はかなり良好であったが。
結核研究所検査室が行った成績をみると、現地で陽性とされた検体の22%が陰性であり、また陰性とされた検体の12%が見落とされていたことになる。また他の検体での成績では郡検査室による3,260の陽性検体のうち、3,119(95.6%)がレファランス検査室でも陽性と判定された。また3,867の陰性検体中3,835(99.1%)はやはり陰性と判定された。
この成績は上に比してはるかによい。
培養検査は国立結核研究所はじめごく少数の施設で試験的に行われているに過ぎない。
そしてこの検査方法を用いた塗抹検査の精度管理の方法も確立されていない。
結核研究所の検査室で培養と塗抹の比較をした成績がある。主として入院患者の塗抹陽性検体を316件培養したところ陽性率は90.2%、逆に塗抹陰性検体440のうち培養陽性は32.4%であった。
感受性検査もハノイ、ホーチーミン、ハイフォンなどで小規模に行われているが、系統的には全く行われていない。結核研究所で研究として行われた成績をみると383例の塗抹陽性のうち312が陽性、このうち265をINH,SM,PZA,RFP,PASについて感受性検査を行った。
再治療例が29%程度含まれていた可能性がある。
結果は41.5%が1剤以上に耐性で、薬剤別にみると;INH(30.2%)、SM(25.3%)、PZA(1.1%)、RFP(3.4%)、EB(6.4%)となっていた。また1剤のみ耐性は23.8%、2剤12.5%、3剤3.0%、4剤2.3%であった。

 

 

 

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